社会保険労務士試験の難易度について徹底的に知りたい!
過去から令和4年まで難易度と合格ラインの推移は?
社労士試験の難易度が高い理由は?
この記事ではそのような要望にお答えします。
社会保険労務士試験を目指すにあたり難易度はとても気になるところです。この記事では社労士試験の難易度について、最新の試験結果と過去からの難易度の推移、社労士の難易度がなぜ高いか等について検証していきます。
❶ 社労士試験 2022年(令和4年)難易度
❷ 社労士試験の合格率と難易度(偏差値)の推移
❸ 過去に社労士試験の難易度が極端に上昇した理由
❹ 社労士試験の難易度が高い理由
❺ 社労士試験の出題範囲と合格ライン推移
❶ 社労士試験 2022年(令和4年)難易度
まずは直近の2022年の社会保険労務士試験の結果について合格率と概要はこちらです。前年に比べ大きく合格者数と合格率が低下し、ここ数年では最も低い合格率となりました。合格者は約19人に1人となり非常に狭き門です。合格率をベースに難易度を偏差値で表すと66で、2021年の偏差値64と比べるとさらに難化した結果となっています。
厚生労働省のウェブサイトにいろいろな情報が開示されていますので興味がある方はご参照ください。
【令和4年(2022年)第54回社会保険労務士試験の結果概要】
① 合格率 5.3% (前年 7.9%)
② 合格者数 2,134人 (前年 2,937人)
③ 受験者数 40,633人 (前年 37,306人、対前年 8.9%増)
※厚生労働省ウェブサイトはこちら
❷ 社労士試験の合格率と難易度(偏差値)の推移
社労士試験の難易度を示す指標として過去から2022年までの合格率と合格者数の推移、そして偏差値を確認します。昨年2021年まで5年間の合格率は6〜8パーセント(偏差値64〜65)と難易度は比較的安定していましたが、2022年は一段難化して合格率5.3%(偏差値66)となりました。また以前の過去では合格率と合格者数が激しく上下していた時期もあります。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 難易度(偏差値) |
2022年度 | 40,633 | 2,134 | 5.3% | 66 |
2021年度 | 37,306 | 2,937 | 7.9% | 64 |
2020年度 | 34,845 | 2,237 | 6.4% | 65 |
2019年度 | 38,428 | 2,525 | 6.6% | 65 |
2018年度 | 38,427 | 2,413 | 6.3% | 65 |
2017年度 | 38,685 | 2,613 | 6.8% | 64 |
2016年度 | 39,972 | 1,770 | 4.4% | 67 |
2015年度 | 40,712 | 1,051 | 2.6% | 69 |
2014年度 | 44,546 | 4,156 | 9.3% | 63 |
2013年度 | 49,292 | 2,666 | 5.4% | 66 |
2012年度 | 51,960 | 3,650 | 7.0% | 64 |
2011年度 | 53,392 | 3,855 | 7.2% | 64 |
❸ 過去に社労士試験の難易度が極端に上昇した理由
過去の合格率推移の中でもとりわけ目を引くのが、2015年の社会保険労務士試験です。前年2014年の合格率9.3パーセントからなんと2.6パーセントまで大きく低下、合格者数も4,156人から1,051人まで約4分の1に低下するという試験の難易度が極端に上昇する事態が発生しています。
極端に合格率が低かった理由については公式な見解は発表されていませんが概ね以下の2つの理由と考えられます。
【2015年に難易度が急上昇した理由】
理由① 2015年社会保険労務士法の改正
理由② 適切な救済措置が為されなかった
理由① 2015年社会保険労務士法の改正
この年に行われた改正では、社労士が弁護士とともに法廷で発言できるという補佐人制度が設けられ、社労士が民事において大きな権限を持てるようになり、それによって社労士に求められる内容が増えました。
つまり、社労士の相対的地位が上がりこれまで以上に社労士に求められる能力の幅が増えました。社労士のレベルアップという動きが少なからず働いた結果この年の社労士試験の難易度が大きく上昇した可能性があります。
理由② 適切な救済措置が為されなかった
社労士試験の合格基準として総得点とあわせて科目別の最低点をクリアする必要がありますが、問題の難易度によって受験者の得点率が低い場合に、救済措置といって科目別の最低点を下げる措置が為されます。
2015年社労士試験では、労災の平均点が2.2点で9割の受験者が労災の得点が2点以下であり本来ならば救済措置の対象となるべきところが為されなかったため多くの受験者が不合格になったと言われています。
その後は、この点も改善されていて直近の過去5年間の合格率を見ても安定していますので、心配はないかと思います。
❹ 社労士試験の難易度が高い理由
上記のような極端な例は別として、そもそも社会保険労務士試験の難易度がなぜ高いのでしょうか?
社労士試験の難易度が高い理由についてはいろいろな意見がありますが、試験内容の特性から主にこれら3項目が挙げられるのではないでしょうか。
理由① 科目合格がなく年に一発勝負
理由② 試験科目が多い
理由③ 科目ごとの基準点がある
理由① 科目合格がなく年に一発勝負
税理士や中小企業診断士の資格試験では、合格した科目は翌年の試験では免除される制度があり計画的に科目合格を目指す方法がありますが、社労士試験では合格基準を超えた科目でも不合格になれば翌年の試験で免除されることはありませんので、試験としての難易度が上がり合格率が下がることになります。
理由② 試験科目が多い
社労士試験は8科目ありそれぞれに択一式と選択式の問題があります。加えて法改正など考慮する必要があり、試験範囲は広く深いといえます。理由①で記載しましたとおり、科目合格はありませんので、この範囲を全てカバーして臨む必要があります。
◉ 社労士試験科目と配点
試験科目 | 択一式 計7科目(配点) | 選択式 計8科目(配点) |
---|---|---|
労働基準法及び労働安全衛生法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
労働者災害補償保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | 10問(10点) | 1問(5点) |
雇用保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | 10問(10点) | 1問(5点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 10問(10点) | 1問(5点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | |
健康保険法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
厚生年金保険法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
国民年金法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
合 計 | 70問(70点) | 8問(40点) |
理由③ 科目ごとの基準点がある
私もそうでしたが、皆さんも科目による得意不得意があると思います。例えば択一式で、国民年金法はいつもほぼ満点が取れるのに、労基法&安衛法はいつも2割しかできないなど。
しかしながら、社労士試験では厚生労働省により合格基準が定められていて、2021年は以下です。
*選択式試験で満点40点中24点以上かつ各科目満点5点中3点または2点以上(科目による)
*択一式試験で満点70点中45点以上かつ各科目満点10点中4点以上
この基準は毎年変動すると同時に、極端に平均点が低い科目などには救済措置が行われる可能性がありますが、基本的に得意不得意を作らず満遍なく得点することが求められます。
これも合格率が低い理由のひとつとして挙げられます。
❺ 社労士試験の出題範囲と合格ライン推移
上記の理由③のとおり、社労士試験合格のために目標とする得点の目安は、全体の7割、かつ「択一式」は科目ごとに満点の40%以上、「選択式」では60%以上とする必要があります。
◉ 社労士試験出題範囲と配点(再掲)
試験科目 | 択一式 計7科目(配点) | 選択式 計8科目(配点) |
---|---|---|
労働基準法及び労働安全衛生法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
労働者災害補償保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | 10問(10点) | 1問(5点) |
雇用保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。) | 10問(10点) | 1問(5点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 10問(10点) | 1問(5点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | |
健康保険法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
厚生年金保険法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
国民年金法 | 10問(10点) | 1問(5点) |
合 計 | 70問(70点) | 8問(40点) |
試験科目ごとの合格基準は原則として一定に定められていますが、科目ごとの最低得点ラインはその年の試験問題の難易度により変動します。合格ラインの過去から2021年までの推移は以下のとおりです。
◉ 過去から2021年(令和3年)までの合格ライン推移
年度 | 択一式 合格基準点 | 択一式 科目最低点 | 選択式 合格基準点 | 選択式 科目最低点 |
---|---|---|---|---|
令和3年 2021 | 45点 | 4点 | 24点 | 3点 (労一→1点,国年→2点) |
令和2年 2020 | 44点 | 4点 | 25点 | 3点 (労一・社一・健保→2点) |
令和元年 2019 | 43点 | 4点 | 26点 | 3点 (社一→2点) |
平成3年 2018 | 45点 | 4点 | 23点 | 3点 (社常・国年→2点) |
平成29年 2017 | 45点 | 4点 (厚年→3点) | 24点 | 3点 (雇用・健保→2点) |
平成28年 2016 | 42点 | 4点 (常識・厚年・国年→3点) | 23点 | 3点 (労常・健保→2点) |
平成27年 2015 | 45点 | 4点 | 21点 | 3点 (労常・社常・健保・厚年→2点) |
平成26年 2014 | 45点 | 4点 (常識→3点) | 26点 | 3点 (雇用・健保→2点) |
平成25年 2013 | 46点 | 4点 | 21点 | 3点 (社常→1点、労災・雇用・健保→2点) |
平成24年 2012 | 46点 | 4点 | 26点 | 3点 (厚年→2点) |
社会保険労務士試験の難易度について、難易度が高い理由と毎年変わる合格ラインの推移について知りたい!という要望は解決しましたでしょうか?
これら5項目で社労士合格率について検証してまいりました。
❶ 社労士試験 2022年(令和4年)難易度と合格ライン
❷ 社労士試験の合格率と難易度(偏差値)の推移
❸ 過去に社労士試験の難易度が極端に上昇した理由
❹ 社労士試験の難易度が高い理由
❺ 社労士試験の出題範囲と合格ライン推移
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